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Blog / Self-care

歯ブラシ・デンタルフロス・歯間ブラシの選び方
― エビデンスに基づくセルフケア用品ガイド

「結局、どの歯ブラシがいいの?」「フロスと歯間ブラシ、どちらを使うべき?」多くの患者様からいただくご質問について、研究データをもとに歯周病専門医がわかりやすく解説します。

セルフケア
歯ブラシ・デンタルフロス・歯間ブラシのイラスト

セルフケア用品に「絶対の正解」はない

ドラッグストアや通販サイトには、数え切れないほどの歯ブラシやフロス、洗口液が並んでいます。「結局どれが一番いいの?」というご質問を診療の中でよくいただきますが、研究データ(エビデンス)だけを根拠に「これが1番良い」と言える商品は、実は存在しません。最終的にどの道具が合うかは、お口の状態やご本人の使いやすさによって変わってくるためです。

とはいえ、これまでの研究をふまえると「多くの方にとって、こちらの方が効果的である可能性が高い」という傾向は見えてきます。今回は、当院が歯科医療従事者向けの研修でお話しした内容を、患者様向けにわかりやすく整理してご紹介します。

歯ブラシ:電動と手用、どちらが効果的か

プラーク(歯垢)の除去や歯肉炎の改善という結果で比較すると、多くの研究で「電動歯ブラシ」、特に毛先が振動しながら回転する「振動回転式」の電動歯ブラシが、手用歯ブラシよりも優れているという報告が積み重ねられています。

電動歯ブラシの中でも、毛先が振動する「音波式」と「振動回転式」を比べると、振動回転式の方がやや優勢とする研究が多い傾向にあります(ただしその差は数%程度で、あくまで統計上の傾向です)。なお、こうした比較研究には歯ブラシメーカーの支援を受けているものも少なくないため、結果はひとつの参考情報としてご覧いただくのが良いかと思います。

手用歯ブラシを使う場合は、毛のかたさは国際的なガイドラインでも「ソフト〜ミディアム」が目安とされています。また、歯と歯の間(隣接面)の清掃については、毛先が細くなった「テーパード」タイプの柔らかい歯ブラシが有利という報告もあります。

安全性については、電動・手用のいずれも、正しく使用していれば大きな問題が起きたという報告はほとんどありません。

まとめ:プラーク除去や歯肉炎の改善を重視するなら、振動回転式の電動歯ブラシが有力な選択肢です。ただし手用歯ブラシでも、正しい使い方であれば十分に効果を得られます。
手用歯ブラシと電動歯ブラシの比較イラスト

歯ブラシの交換時期:3〜4か月が目安

国際歯科連盟(FDI)のコンセンサスレポートでは、歯ブラシは3〜4か月ごとの交換が推奨されており、これは専門家の96%が合意している内容です。実際の研究でも、4か月を過ぎるとプラークの除去効率が下がり始めることが分かっています。電動歯ブラシのブラシ部分についても、同様の傾向が報告されています。

「長く使うと歯ブラシに菌が増える」という話を耳にすることもありますが、使用期間が長くなれば菌が増えるのはある意味当然のことで、極端に心配する必要はありません。気になる方は、早めに交換していただいて問題ありません。

デンタルフロスと歯間ブラシ、どちらを使うべき?

歯と歯の間の清掃については、多くの研究で「歯間ブラシ」の方が、プラークの除去や歯肉炎の改善という点で、デンタルフロスよりも効果的であるという結果が示されています。

デンタルフロス単体の効果については、実は研究上の根拠は比較的弱いとされています。特に歯周病(歯周炎)の治療・管理を目的とする場合、欧州歯周病学連盟(EFP)のガイドラインでも、フロスによる清掃は第一選択としては推奨されないと明記されています。フロスは正しく使えばもちろん効果がありますが、実際にはうまく使いこなすのが難しく、その差が結果に表れやすいと考えられます。なお、ワックスの有無などフロスの「種類」による効果の違いは、ほとんどないとされています。

歯間ブラシの形状については、歯ぐきが下がってすき間が大きくなった部位ではストレートタイプがカーブタイプよりやや優勢という報告があります。ゴムやワイヤーなど材質による効果の差は、大きくはないようです。

「ウォーターフロッサー(水流で洗浄するタイプ)」については、歯間ブラシに劣るとする研究が多いものの、「使わないよりは良い」という位置づけで考えていただくのが良いかと思います。

まとめ:歯と歯の間の清掃は、まず歯間ブラシを基本の選択肢として考え、隙間が狭くて歯間ブラシが入らない部位はフロスで補うのがおすすめです。どちらを使うにしても、毎日続けられることが何より大切です。
デンタルフロスと歯間ブラシのイラスト

洗口液(マウスウォッシュ)については別記事で詳しく

洗口液についても数多くの研究がありますが、この分野は情報のアップデートが比較的早い領域です。当院で実際にご提案している内容も含め、別記事「歯周病治療における洗口液の効果と使い方」で詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。

まとめ

今回ご紹介した内容を簡単にまとめると、以下のようになります。

  • 歯ブラシは、振動回転式の電動歯ブラシがプラーク除去・歯肉炎改善の面で有力な選択肢。
  • 歯ブラシは3〜4か月を目安に交換する。
  • 歯と歯の間の清掃は、歯間ブラシを基本に、入らない部位はフロスで補う。
  • どの道具にも「絶対の正解」はなく、無理なく毎日続けられることが最も大切。

セルフケア用品は、お口の状態やお悩みによって適したものが変わります。当院では定期検診やクリーニングの際に、患者様一人ひとりに合った歯ブラシ・歯間ブラシ・フロスをご提案していますので、選び方に迷ったときはお気軽にご相談ください。

参考文献

本記事は、以下の文献・ガイドラインをもとに作成しています。

歯ブラシについて

  1. van der Sluijs K, Slot DE, Hennequin-Hoenderdos NL, Valkenburg C, van der Weijden GA. The efficacy of an oscillating-rotating power toothbrush compared to a high frequency sonic power toothbrush on parameters of dental plaque and gingival inflammation: A systematic review and meta-analysis. Int J Dent Hyg. 2023;21(1):17–34. PMID: 35633808
  2. Thomassen TMJA, van der Weijden FGA, Slot DE. The efficacy of powered toothbrushes: A systematic review and network meta-analysis. Int J Dent Hyg. 2022;20(1):3–17. PMID: 34677772
  3. Glenny AM, Walsh T, Iwasaki M. Development of Tooth Brushing Recommendations Through Professional Consensus. Int Dent J. 2023. PMID: 38052700(FDI国際歯科連盟コンセンサスレポート)
  4. Anti-plaque and anti-gingivitis efficacy of different bristle stiffness and end-shape toothbrushes on interproximal surfaces: A systematic review and meta-analysis. J Evid Based Dent Pract. 2021. PMID: 34364056
  5. Schmickler J, et al. Influence of the utilization time of different manual toothbrushes on oral hygiene assessed during a 6-month observation period: A randomized clinical trial. J Periodontol. 2014;85(8):1050–8. PMID: 24328045
  6. Rajyani CM. Assessment of microbial contamination on twice a day used toothbrush head after 1 month and 3 months: An in vitro study. J Nat Sci Biol Med. 2015;6(Suppl 1):S46–8. PMID: 26604618

デンタルフロス・歯間ブラシについて

  1. Sambunjak D, et al. Flossing for the management of periodontal diseases and dental caries in adults. Cochrane Database Syst Rev. 2011;(12):CD008829. PMID: 22161438
  2. Carl WF, Rice GL, Horton JE. Evaluation of floss types for interproximal plaque removal. Am J Dent. 2000;13(4):270–4. PMID: 11763554
  3. Terézhalmy GT, Bartizek RD, Biesbrock AR. Plaque removal efficacy of four types of dental floss. J Periodontol. 2008;79(2):245–51. PMID: 18251656
  4. Efficacy of straight versus angled interdental brushes on interproximal tooth cleaning: A randomized controlled trial. Int J Dent Hyg. PMID: 28695344
  5. Worthington HV, et al. Home use of interdental cleaning devices, in addition to toothbrushing, for preventing and controlling periodontal diseases and dental caries. Cochrane Database Syst Rev. 2019;4:CD012018. PMID: 30968343
  6. Sanz M, Herrera D, Kebschull M, Chapple I, Jepsen S, Berglundh T, Sculean A, Tonetti MS. Treatment of stage I-III periodontitis—The EFP S3 level clinical practice guideline. J Clin Periodontol. 2020. PMID: 32383274(EFP欧州歯周病学連盟ガイドライン)

本記事は、当院院長・吉武秀(日本歯周病学会 歯周病専門医)が歯科医療従事者向けセミナーで行った講演内容をもとに、患者様向けに再構成したものです。

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